「頑張らなてくいい。」
「無理しなくていい。」
「逃げてもいい。」
「嫌なことを続けなくていい。」
最近よく耳にしたり、目にしたりする機会が多い言葉。
SNS上でも、いい言葉、精神性のある言葉を選んで載せている人の言葉の中で見かけます。
確かにそれを見て、ホッとしたり、救われる人もいるんでしょう。
頑張り過ぎてしまう人にはね。
幼少期に絵本をたくさん読んだ子供と、読んでいない子供の心の発育、形成が違うらしいんです。
それを危惧した絵本読み聞かせの団体の方から、絵本箱の試作を依頼され、製作したご縁で、その活動を広める講演会で、なぜか僕が話をすることになったんですね。昨年の話。
僕の前に話をしたのが、作家の柳田邦夫先生などというかなりのプレッシャーの中、たいして絵本を読んだこともなく、絵本を広めようなどと考えたこともない僕が、絵本を広げる活動をしている団体の会に集まった人に話をするのですから。
「これ、かなりアウェイな状況だよなぁ。」
なんて思いながら、一応話をしました。
その時思ったんですよね。
この講演会に集まる人に、「お子さんに絵本を読んであげましょう。」なんていう必要ないよね。っと。
そして、本当に絵本を読んだ方がいいと伝えたい人は、この講演会には参加しないんだろうな。っと。
僕は思うんですよね。
あることを伝えたいと思って伝えようとする時、伝えたい人には伝わらず、えてして伝わらなくても大丈夫な人に伝わるものだと。
昨年、旅する木に二人新人が入ってきました。
そのうちの一人、Tが辞めました。
Tは中学生の時から家具職人になりたくて、木工系の部活がある高校を選んで進学し、旅する木を知って、住み込みの丁稚奉公にも「むしろその方が木工に集中できていい。」と、勢いよくやってきたんですね。
でも、うちに来てからのTを見ていると、一流の家具職人になりたい。と言う気持ちはある。でも、そのための努力はしようとしない。
「旅する木はオーダーで家具を作っているから、今日教わった仕事が次、いつやるかわからない。だから忘れても思い出せるように、しっかりノートにまとめるように。」
と入社直後に伝えて持たせたノート。
同じミスを繰り返すので、持って来て見せてみろ。と持って来させたら、1ページも書いてない。全く買ったまま。
自分がした失敗をやり直させるため、休みの土日に出てきてやらせたところ、その夜。
「こんな自分が、旅する木の家具を一生大事に使いたいと求めてくるお客さんに、家具を作っていては申し訳ない。だから続けられません。家具職人を続けるんだったら、旅する木だと思っているので、もう家具職人になるつもりはありません。」
「随分それらしいカッコつけた理由を並べてるけど、結局のところ、お前は逃げ出すんだぞ。夢に向かって努力をしようとせず、目先の辛さに耐えるのが嫌で、逃げ出すんだぞ。」
僕の言葉で、Tは初めて自分が逃げ出すんだと気がついたようで、
「明日、来るか来ないかは、お前に任せる。」
と言って帰らせて、次の日、
「逃げるのはやめました。」
と言って出社するのを期待したのですが…
次の日、Tは来ませんでした。
今までもそうなのですが、新人に家具作りの面白さを伝えられないのは、僕の責任だと思って、結構落ち込むんですよね。
『忍耐』『努力』『根性』
などといったものが通じない世代、時代だとよく言われます。
でも、僕は思うんです。
面白ければ、それは忍耐じゃなくなる。
楽しければ、それは努力じゃなくなる。
嬉しければ、根性はいらない。
そう思うと、やっぱり僕に責任はある。
でも、僕の本当の本当の本当の本心は、
面白ければ、それは忍耐じゃなくなる。多少はね。
楽しければ、それは努力じゃなくなる。多少はね。
嬉しければ、根性はいらない。多少はね。
嫌いなことをやることはない。
でもね、夢を叶えるとしたら、その道を極めようとするんだとしたら、
やっぱり頑張りは必要なんだと思うんです。
多少の『忍耐』や『努力』や『根性』は必要だと思うんです。
楽しい中に、『忍耐』や『努力』や『根性』があって、
その先に、もっと楽しみや、もっと喜びや、もっと希望や、もっと役割や、もっと自分の幸せや、もっと人の幸せや、そういうものがあると思うんです。
冒頭の言葉
「頑張らなくていい。」
SNSで本当に最近頻繁に見かけます。
それを見るたびに僕は思うんです。
この言葉、言いたいことはわかるよ。
逃げずに頑張って、無理をして、自分の心を壊しても続けようとしている人に伝えたいんだよね。
でもね、あなたが伝えたい人より、伝える必要のない人に、伝えたいことじゃない意味で伝わっていることの方が多いんじゃないかな?っと。
先日、これもSNSで見かけたのですが、思わず涙が出てしまいました。
古いんですかね?僕はこっち派です。
ぜひ見てみてください。
僕は言いたい。
Tさぁ、
「君は本当に頑張ったのかい?」
「真剣にやってみたのかい?」
「お前が逃げているのは、辛さじゃなくて、夢なんだぞ。」