インタビュー紹介 | 車椅子の製作・木の車椅子なら旅する木

INTERVIEW

インタビュー紹介

家具工房 旅する木 
代表 須田 修司 
× 
長谷川 宙(そら)さん と
 お母さま
木の車椅子 
ユーザーインタビュー

木の車椅子ユーザーである長谷川 宙(そら)さんと、同席していただいたお母さまのインタビューをお届けします。

旅する木と出会ったきっかけは?

〈宙さん〉
2015年~2016年くらいだったと思うのですが、須田さんがSNSで木の車椅子製作のモニターを募集しているのを見て、すぐに応募しました。

〈お母さま〉
一緒に見ていたのですが、その後家族の誰にも確認せずにさっさと自分で申し込んでいました(笑)

その後すぐに工房に来て須田さんとお話されたのですか?

〈宙さん〉
札幌市南区にある家具工房さんに木の車椅子が置いてあるということで、最初の打ち合わせはそこでしました。

〈お母さま〉
その家具工房さんで、札幌近郊の木工家が製作した椅子の企画展があって、木の車椅子を出展しました。
その会場に宙さんとご家族が来てくれました。

初めて木の車椅子を見た時の印象は?

〈宙さん〉
車椅子に15年以上乗っていて、たくさんの種類の車椅子を見てきたつもりだったのですが、「すごい!!」の一言でした。
本当に全部木でできていて、衝撃に近い印象を受けました。

その場で実際に乗ってみたところ、漕ぐところがすごく持ちやすくて、とても良く考えられた作りにも感動しました。
また、今までの車椅子にあった冷たさがないのも驚きました。
金属って冷たいんですよね。とくに冬に乗ると冷たさを辛く感じることもあるのですが、
木の車椅子は暖かいんですよ。冬は特に暖かさを感じます。

お母さまはいかがでしたか?

〈お母さま〉
最初からこれはもう絶対に作っていただいて乗ってみたいと思いました。
乗り物というよりも家具に近い感じで、フォーマルなところで乗るにもすごくいいという印象もありました。

宙の曽祖父が宮大工なので木にはこだわりがあるというか、作りや組み方を家族で見て、“すごいね、この技術は他では真似できないよね”という話もしました。

製作者である須田さんの印象はいかがでしたか?

〈宙さん&お母さま〉
SNSでは拝見していたので、想像通りの優しさで、話もしやすかったです。
作っているものにも人柄が出ているなという印象でした。

そこからすぐに製作の打ち合わせになったのですか?

〈須田さん〉
その時は製作の順番待ちがあって、実際に作り始めたのはそこから2年ほど後でした。
その間に違う人のものを作って。
当時は1年に1台くらいしか作れなかったので、2人分つくってやっと宙さんの順番が来て打ち合わせをスタートしました。

実際の打ち合わせはどんな感じで進んだのですか?

〈須田さん〉
まずは宙さんの希望を全部聞きました。
その中でできる、できないはもちろんあるんですけど、できるだけ希望を叶えたいということで、まずは要望を全部聞きました。

木にもいろいろ種類があると思うのですが、使用する木も要望によって変わってきますか?

〈須田さん〉
はい、変わってきます。
その時はウォルナットかチェリーの2択だったのですが、色が濃いウォルナットをご希望でした。
宙さんの車椅子を作るにあたって一番迷ったのが、実は木ではなくて座面でした。布か合皮か革かで迷って、最終的に暖かい布を選んだのですが、
その後に色でまた迷った記憶がありますね。

〈お母さま〉
おばあちゃんにどの色がいいのかアドバイスをもらったりとか、時間がかかりましたね。
縫物をする人でしたので、カラーバランスなどを確認しながら打ち合わせを進めていただきました。

製作期間はトータルでどのくらいでしたか?

〈須田さん〉
打ち合わせだけでかなり時間を使いました。
4,5回は工房まで来ていただいて、たぶん3,4ヶ月くらいはかかった記憶があります。
その後は製作で半年くらいかかりました。

製作途中、また組み上がった後も様々な細かい調整があると思うのですが、
その辺りはどう進んだのですか?

〈須田さん〉
要望を聞きつつ、パーツごとに微調整をしていきます。
寸法的なこともそうなのですが、宙さんは若いし行動的なので、できるだけ動きを活発にするための調整をしました。
宙さんが乗った時の重心と、後輪の軸の距離が長くなると動きが鈍くなる、近ければ近いほど動きが活発になるので、できるだけ動きやすくということで、ギリギリまで攻めるというか・・・。
ただ、近すぎると転倒してしまうので、その辺をどうするかは設計の段階から苦労しました。
活発に動く際に転倒しないように、車輪も斜めにしました。
3度の角度をつけていますが、それも宙さんと話をして調整していきました。

かなり追い込んで作ったということですね。

〈須田さん〉
はい、そうですね。

実際に、今のモデルに乗ってどのくらいになりますか?

〈宙さん〉
ちょうど1年になりますね。

重さやフィット感といったところはいかがですか。

〈宙さん〉
どうして木の重みがあると思うので、そこは普通の軽い車椅子に比べると少し重くなってしまうのは仕方ないと思っています。
ただ、だからといって極端に重いかというとそんなことはなく、漕ぎにくいと思う重さではないです。
身体に合わせてもらっていますので、動きにくいとか扱いにくいといったことはなく、
意のままに操れる感じです。

外出時の道路などでの使用感はいかがでしょう?

〈宙さん〉
過去に何度かキャスター部分のネジが緩みやすいことがあって、小石を踏んだ時などに緩みを感じることはあったのですが、今は解決してもらったので大丈夫です。
緩みといっても、キャスターが外れてしまうといったことはもちろん起きていません。

〈須田さん〉
キャスターのネジの緩みも、実は宙さんからの指摘で初めてその点に気づくことができて、使用するネジもいろいろと調査して、飛行機でも使用されている特殊なネジへ変更しました。
揺れれば揺れるほど締まり、絶対に緩まないというネジですので、まず緩むことはないと思います。

進化し続ける木の車椅子といったところでしょうか。

〈須田さん〉
そうですね。
実際に使用してもらって、問題点を洗い出して、解決して、進化させて、次の作品にまた活かすという感じです。

他の方々が普通の金属の車椅子を使用される中、
木の車椅子を使っていることで感じることはありますか?

〈宙さん〉
僕は立って歩くことはできないので、どんな車椅子に乗っていてもそれが移動手段になります。
靴に例えると、“せっかく毎日履くのであればいい靴がいいよね”というのと,
“せっかく自分の移動手段になるのであればいい車椅子がいいよね”っていうのは、似ている部分があると思います。

様々な用途がある中で僕はこれを室内用に使っていますが、室内ではこれが一番いいと思います。
例えば、結婚式場のようなフォーマルな場所とかには、無機質な金属製のものではなく木の車椅子を置くことで、場所にも人にも優しく、雰囲気もより良くなるのではないかと思います。

人が集まる場所などで、周りからのリアクション的なものはありますか?

〈お母さま〉
はい、ありますね。
空港やイベント会場、スポーツの大会など、だいたい振り返られて“あ、今の見たことあるよね。テレビで見たことあるよね”という声が聞こえてきますし、実際に声をかけてくる方もいらっしゃいます。

私たちは、息子がまだ小さい時には、“え、なんであの子は車椅子に乗ってるの? 病気なの?”といった雰囲気が周りから伝わってきて、実際に避けられたりすることもあって悲しい気持ちになったことがあります。
旅する木さんの木の車椅子に乗っていると、そんなリアクションとは正反対のポジティブな反応が来ますので、話しかけられても全然問題ないです。

現在要望することは何かありますか?

〈お母さま〉
空港とかイベント会場とかに持っていく際に、もし折りたたみになったら車にも載せやすいので、そうなったら最高です。
期待しつつ(笑)

新しい課題が来ましたね(笑)

〈須田さん〉
来ましたね(笑)
実は、今まさに折りたたみ式のものを試作していますので、できたら宙さんのところに持っていきます。

このようなご要望が進化していくきっかけになりますので、本当にありがたいことです。
新しいものを生み出すのはとても好きですので、難題を与えられると燃えます(笑)

本日は誠にありがとうございました。
さらに進化した木の車椅子に出会えるのを楽しみにしております!

〈一同〉
ありがとうございました!