キッチンや大物家具の設計に取り掛かると、2〜3日、朝から晩までパソコンに向かいっきりの日々が続きます。
腰は痛くなるし、目は疲れるし、頭はパンクしそうになるし…
先日、ピークに達して、スタッフが作業している工房の体育館に行って、
「あ〜、もうダメ!もう限界。ちょっと温泉行ってくる。」
と言うと、スタッフは、間髪入れずに
「行ってらっしゃい!」
「きっとその方がはかどります。」
と、快く送り出してくれました。
ありがたいなぁ。と思いながら、昼間っから温泉に行ってきました。
チケットの券売機にお金を入れようとすると…
ん!?
なんと、券売機のチケットが出てくるところにチケットが入っているではありませんか!
しかも2枚。
皆さんだったらどうしますか?
僕はですね〜。
一瞬、ラッキ〜!と思って
とりあえずお金を入れるのをやめて、そのチケットを手に取りました。
そこで考えます。
待てよ?温泉に入りに来て、券売機でチケット買って、そのチケットを置きっぱなしにするって…ないよね?
チケット買ったら、すぐに店員さんに渡して、温泉入るもんね。
俺、試されてる?
コイツはこのチケットをどうするか。ネコババするのか、はたまた正直に店員さんに渡すのか?
ドッキリ系テレビ番組?←考過ぎ(笑)
振り返って辺りの人を見回しても、僕の様子を見てるそれらしき人は見当たらない。
これはいけるかも…
いや、でも、今の俺の行動を一部始終、影から見られてたら、かなり怪しいし、確信犯だよなあ。
見つかったらかなり恥ずかしいし…。
ここはやっぱり正直者になろう。
うん、たかだか900円ちょっとだし。
誰が見ていなくても、神様は見てる!
そう、『金の斧銀の斧』の話もあるしね。
な〜んてことがグルグル頭を駆け巡って、結局お金を入れて、自分のチケットを買って、
拾った二枚のチケットを持って、店員さんに
「これ、券売機に入ってました。」
と言って渡しました。
店員さんは普通に、「そうですか。」と言って受け取りました。
いいことしましたよね〜?
正直ですよね?
でも、な〜んか後味が悪い。
なんか、気持ちがモヤモヤする。
わかりますかね?
いや、損したとか、使っちゃえばよかったとか、そういうことじゃないんです。
この僕のスッキリしない感じ。
ちょっとした自己嫌悪に近い感じ。
あー、ダメダメ。せっかく気分転換しに来てるんだから、気分変えよう!っと気持ちを切り替えて湯船に浸かっていると、
「あ〜ああ。せっかくだったのに。」
???
「せっかくご褒美だったのに。」
「…!もしかして、神様?」
神様 「そうよ〜。せっかく毎日仕事頑張ってるから、ちょっとご褒美あげようと置いといたのよね。残念。」
僕 「え?マジに?そうだったんですか?」
神様 「あのね〜、あんたね〜、プレゼントはありがたく受け取るもんよ。」
僕 「え?だって…」
神様 「だってもクソもない!じゃあ、あんたね、誰かにプレゼントした時に、受け取りを拒否されたらどんな気持ち?」
僕 「それは淋しくて悲しい。」
神様 「でしょ?今私そういう気分よ。」
僕 「だって〜神様からのご褒美かわからなかったし。」
神様 「だってもヘッタクリもない!
僕 「でもネコババするよりいいんじゃない?正直に返したんだし。まあ、迷ったけどね。」
神様 「あんた何年生きてるの?な〜んにもわかってないわね。私の好みのタイプ。」
僕 「え?神様の好みのタイプ?神様にも好みのタイプってあるの?」
神様 「当たり前じゃないの。私だって好き嫌いあるわよ。イケメンの方がいいに決まってるじゃない。」
僕 「え?神様って女なの?」
神様 「どっちもよ。」
僕 「喋り方、女だけど。」
神様 「うるさいわね。」
僕 「それより、神様が好き嫌いあったらダメでしょ。世の中不公平になっちゃうでしょ!まあ、そう言われてみれば、世の中不公平だけど。」
神様 「そうねえ。あなたたちから見たら、不公平に見えるかもね。」
僕 「不公平に見える?イヤイヤ、見えるんじゃなくて、明らかに不公平ですよ。努力と結果が釣り合ってないもん。運がいい人、悪い人もいるし。」
神様 「まあ、そう見えるかもねえ。」
僕 「だからー、見えるんじゃなくて、そういうこといっぱいありますよ。」
神様 「私からすると、受け取るのが上手い人と下手な人がいるのよね。」
僕 「受け取るのが上手い人と下手な人?」
神様 「そう。さっきのあんたは、受け取るの下手だったわよね〜。ああいうのは私、大っ嫌い!」
僕 「神様、大っ嫌いとか言っちゃうの?」
神様 「大っ嫌いなものは大っ嫌いよ。」
僕 「神様ってそういうこと言わないかと思ってた…」
神様 「あんたねえ、あんたの頭で考えることなんて所詮、たいしたことないの。ど〜でもいいこと考えたり、気にしたり。ほんと、そういうのど〜でもいいのよね。」
僕 「ちょっとムカつくんですけど。」
神様 「なに?誰がに見られてたら恥ずかしい?神様は見てる?金の斧銀の斧?いいことした?正直もの?バチが当たる?バッカじゃない?」
僕 「え?神様は一部始終見てて、善悪を判断してるんじゃないの?」
神様 「見てるけど、善悪の判断はしたことないわよ。あなたたちが勝手にやってるだけじゃない。い〜い?私の好きなタイプは、素直な人、そして潔い人。」
僕 「素直な人、潔い人?」
神様 「そう。例えばさっきだったら、券売機にチケットがありました。やった〜!嬉しい〜!ありがとう〜。って言って、喜んで使っちゃう子?可愛いわよね〜。大好き!」
僕 「え?それ、ダメでしょ!ネコババでしょ。」
神様 「なんでダメなの?私からのプレゼントを素直に喜んで受け取ってくれて、幸せになってくれてるのの、どこがいけないのよ。嬉しいじゃない?」
僕 「え〜?神様そういう考えなの?」
神様 「そうよう。受け取り上手な子には、もっとあげたくなっちゃう。私、プレゼントあげるの、大好きだから。」
僕 「潔い人ってのは?」
神様 「潔い人は、さっきで言うと、チケットを見つけたら、何も考えず、さっさと、チケット入ってました。ってお店の人に持ってく人ね。潔いじゃない。大好き!そう言う人には物じゃなくて、チャンスをあげたくなっちゃう。」
僕 「あー、なんかそれはわかる。俺、それがよかった。っていうか、俺、結果としてはそれに近いことしたと思うけど。」
神様 「全然、全然、ぜ〜んぜん違う!」
僕 「いや、そんな全否定しなくても…」
神様 「こうなったらどう、ああなったらどう、どっちが得か、人からどう思われる?な〜んて、ど〜でもいいこと頭であれこれ考えて、結局ご褒美を受け取らないなんて、ほんと、可愛くないじゃない?あんたが神様ならどうなのよ?」
僕 「ん〜、確かに、サンタさんからのプレゼントを前にして、これは貰うべきか、貰わないべきか迷ってる子供を見たら、ガッカリしちゃいますよね。」
神様 「今この瞬間のあんたの心がどうなのか?が大事なのよね〜。あんたの頭の考えなんて、全く興味無し。あんたの頭が考えることなんて、ほんと、的外れで、たいしたことないことばっかなんだから。」
僕 「『人は考える葦である』っていうじゃないですか!人は考えるものなんです!それが人間なんです!」
神様 「つべこべうるさいわねえ。ああ言えば上祐か!って知らないか。その言葉の本質は、子供のように、いろんなことに好奇心を持ちなさい。っていうことなのよ。もう、なんにもわかってないったらありゃしない。」
僕 「そうなんだ。後でネットで調べてみます。」
神様 「とにかくあんたも子供のように、その時その瞬間の自分の気持ちを大事に、その気持ちに従ってみたら?もっとず〜っと人生楽しめるわよ。そういう人が、私からのご褒美の受け取り上手な人ってことね。」
僕 「頭で考えずに、その瞬間の自分の心ね〜。意識してみます。」
神様 「そらから私のご褒美は、いいことばっかりじゃないからね。一見辛いことも、ちゃ〜んと、ご褒美よ。楽しんで受け取りなさい。じゃあね〜。」
僕 「え〜?!ちょっ、ちょっと神様!最後にその!意味深な言葉置いてかないでくださいよ。」
気がつくと露天風呂に青空と、そこに漂う綿菓子のような雲が映っていました。
「神様からのご褒美ね〜。受け取りそびれたなぁ。でも、ご褒美が温泉のチケット2枚って、ちょっとセコくない?もうちょっと…
あ〜、イヤイヤ、こんなこと考えたらまた怒られちゃう。よし!次は絶対にご褒美、素直に受け取るぞ!」
そうして僕は、温泉から出て、着替えて、下駄箱のロッカーの鍵を開けて靴を取り出して、戻ってきた100円を財布に入れる時。
神様からのご褒美がないか、周りのロッカーの、100円が戻るところを見渡してしまうのです。
その時
「あんたねえ、あんたの方がセコいでしょ!」
なんて神様の声が聞こえた気がした。